本年度も審査委員長を拝命しました神沼です。
それでは、予選において感じたことを簡単に講評させていただきます。
先ずは課題部門に関して。テーマが変った1年目にも関わらず、応募数が大変増えました。レベルも上がったのか、審査委員の評点が満点となったチームが複数あります。本年度の課題テーマは「ICTでサポートする明るい少子高齢化社会」と少し長めではありますが、このテーマのどこをキーワードとして切り出したのかによって、チームの解釈が違い、応募作品に多様性を感じます。その取り組みやすさが、応募数の増加につながったのではないかと推測しています。アイディアの視点ではそれほど目立つものは感じられませんでしたが、作品の中身に工夫した跡が見られました。最近流行しているSNSを組み入れた作品が多く、自分たちが関心をもっている切り口から課題のテーマと関連付けた様子が窺がえました。但し一方で、「高齢者は見守りの対象である」といった固定観念が強いという印象を受けたのは少し残念です。もう少し広い視点から少子高齢化社会の問題を捉えてくれることを期待していました。
松澤先生曰く、「仕様を欲張りすぎて、焦点がわからなくなった作品も多いようですね。問題をしぼった作品の方が、提案として洗練され、高い評価を受けているようです。」と。その通りですね。テーマが公開されてから短期間でアイディアを掘り下げることは難しかったかもしれませんね。応募数が増えた結果、本選で良い意味での競争ができることを期待しています。
自由部門では、独創性という点では新しさを感じる作品は少なかったのですが、既存のアプリケーションに自分たちで小さな改善や工夫を加えていることには好感が持てました。作ることへの思いが強いようですので、提案の実現可能性は高いと考えます。どちらかというと、予選では有用性が高いものが選ばれたように感じました。
競技部門では、全体的に記述内容が向上したように思いますが、中には説明不足のチームも若干見られました。競技では特にルールが重視されますので、本選で失格とならないよう、競技ルールをしっかり確認してから開発にあたってください。また、応募資料の誤字脱字などが残っているようですので、もう一度推敲されることを期待します。指導教員の先生方にも確認してもらうとよいでしょう。
最後に全体を通して。応募資料は自分たちのメモではなく、審査委員に読んでもらうためのものです。審査委員に理解してもらえるかどうかを意識した資料づくりを心がけるとよくなると思います。資料作成では、基本的に「何を、どのようなプロセスで、どこまで開発するのか」を明瞭に述べてください。例えば、その作品で何を実現したいのか、技術的な課題は何か、どのように問題を解決するかなどをきちんと書くことが求められます。これは本選のプレゼンやデモにも通じることです。
予選通過チームにひとこと。審査委員からのコメントが送られると聞いておりますが、これらのコメントを反映して、10月には完成度の高い作品が見られることを期待しています。
2012年6月30日予選審査会にて